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象牙色の立体

映画などについて書きます。

スポンティニアス・コンバッション ~人体自然発火~を観た!

久しぶりにこれは!という映画を観た。

 

それは「悪魔のはらわた」などを撮ったトビー・フーパー監督の1990年の映画、「スポンティニアス・コンバッション ~人体自然発火~」である。非常に胡散臭い名前だ。

 

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まあ確かに細部を観てみると、いや実際細部を観ないまでも、本当にアラの多い映画である。とにかくツッコミどころを挙げればきりがない。しかし、この映画の持つ圧倒的な緊張感や、孤独からくる悲哀などまさに超能力系スリラーがもたらすべき興奮を純化させたような映画になっているのだ。超能力系のスリラー映画は数あれど、その中でも特筆して素晴らしいと感じた。

 

あらすじ

1955年、ネヴァダ砂漠で行なわれた水爆実験において抗放射線ワクチンを投与され実験台となったジョーンズ夫妻は無事男児を出産した。しかし数日後、夫妻は突然体から火を吹き出し焼死したのである。その男児、実はパイロキネシスを使える超能力少年になっていたのだ。

 

まず超能力系スリラーとは言ったものの、SF的な設定はめちゃくちゃである。水爆実験から体を守るシェルターの耐久度を実験する役目となった夫婦が生んだ子供が、発火能力を持つというものだ。なぜそうなるかという説明もまったく意味不明であり、それぞれの対応も違和感ありまくりだが、おそらく見ているうちに気にならなくなるだろう。それぐらいずっと面白い。ただ、この人体の自然発火現象は天国の炎と呼ばれており、さらにこの息子は水爆実験を行ったりするような原子力を扱う人間を神に代わって罰するような存在になっているため、どちらかというと、宗教的要素の多い映画なのだろう。

 

では、先ほども書いた超能力系スリラーがもたらすべき興奮とは何か。

 

一つめはまず、超能力を持つ人間の無自覚がもたらす緊張感である。この映画でも例に漏れず、青年になった夫婦の息子(ジム)は、普通に日常生活を送っているし、彼女もちゃんといる。「普通に生活してるじゃないか」と思っていたら、しかし、である。主人公が怒りを向けた人間が、翌日になってからなぜか焼死している(彼がその場を離れてから燃えているらしい)という噂が、ラジオや誰かの意見からちらちらと主人公の耳に聞こえ始めるのだ。つまり、観ている観客は彼がパイロキネシスを使えることを知っているが、彼自身はそれを知らないこと、そして、彼がその能力を全くコントロールできていないことがここで分かる。そんな状態で、彼をイライラさせる人間が次々と現れ、彼がそいつらにキレまくるのだ。いつ話し相手が発火するかわからない、常にハラハラとした状態がずっと続く。特に彼女はすごいいい子なので「彼女にだけはキレないでくれ」「彼女にだけはキレないでくれ」といても立ってもいられない...ハラハラする...!

 

二つめは、超能力を持つ人間の孤独である。彼は当然そんな人間なので、元凶となる組織に監視されている。キレると何が起こるかわからないため、周りには誰も寄り付かない。寄り付いた人間がいたとしても、組織の差し金である。

 

彼は能力を使うとその副作用に自分も体の一部が発火するため、最初は彼自身は周りの人間と同じように、自分が突然発火する病気のようなものにかかっていると考えていた。そんな中で彼が今までの境遇に対する悲哀を彼女に語り、彼女に対して信頼を示すといういいシーンがあるのだが、さらに追いつめられると彼女までもが組織にコントロールされていると疑い始めるのだ。本当に悲しいのだが、そんな状態になると、まさにいつ彼女を燃やすかわからない!

 

そして三つめは、ついに自覚的になった超能力によって今まで味わった孤独やうっぷんを爆発させまくる終盤である。能力に自覚した主人公はとにかく何もかも燃やしまくる。そして、自分を生んだ組織や原子力に対して圧倒的な力によって復讐するのだ。この終盤の展開がとにかくぶっ飛んでいる。あらゆる要素がつるべ打ちのように怒涛の展開を見せ、大スペクタクルとともに、自分の苦しみや両親の復讐や彼女への愛や原子力への憎しみなどがすべて混ぜこぜになって、文字通り何もかも燃やし尽くすのである。

 

この終盤の展開はぜひDVDなどで観てほしい。個人的に、単体の映画としては悪魔のいけにえよりも断然面白かった。

 

 

 

さて、余談であるが、超名作ゲーム「フォールアウト3」はこの映画をかなり参考にしていると考えられる。まず、いきなりこの映画は核シェルターの胡散臭い白黒CMから始まるのだが、それはフォールアウト3の核爆弾に対する皮肉の効いた予告編と同じである。また、この映画のテーマ音楽も、フォールアウト3で流れるのだ。

 

胡散臭いフォールアウト3の予告編は映画内のものとよく似ている

 

映画で水爆が爆発するときに流れるテーマソングはフォールアウト3でも使われている

 

というわけで結論としては、フォールアウト3の制作陣は良くわかっているということであった。