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象牙色の立体

映画などについて書きます。

最近観た映画の感想(その3)

最近は時代劇映画にハマっています。いきましょう。

 

柳生一族の陰謀

 

時代劇映画というのは、老人向けのものでは決してない。当時の時代劇映画は血が大量に吹き出し、斬られた手がばさっと床に落ちる、そんな刺激的なジャンルだったのである(名著「なぜ時代劇は滅びるのか」より)。そもそも血が大量に噴き出るような海外のスプラッタホラーの起こりも、当時の監督たちがこのような時代劇を観てからなのだ。そんな時代劇なので、実は当時から、そもそも時代考証なんてあまり考えられたことがなかった。時代劇という舞台で、ファンタジックに物語を展開させるSFのようなジャンルですらあった。映画というのは何でもできるのだから、面白ければそれでよい。そんなお手本となるような驚愕の展開をみせるのが、この柳生一族の陰謀である。ラストにそんなことをやってしまったら歴史がとんでもないことになるだろ!みたいなオチをつけているので、一見の価値あり。「これは夢だ、夢だ、夢だ、夢でござる!」

 

 

 

必殺4 恨みはらします

 

TV時代劇の中でもとにかく過激だった、必殺シリーズ映画化の第4弾。ちなみに、私は小学生の時に必殺シリーズは再放送で観ており、最も好きな時代劇だ。TVシリーズの映画化とバカにしているかもしれないが、この4作目の監督にはあの「仁義なき戦い」の深作欣二が起用されている(もともと深作監督企画だけど)。マンネリ化した必殺をテコ入れするということから深作監督が起用されたこともあって、とにかくやりたい放題やっており、斬りあいの大乱闘というとんでもないシーンから映画が始まることからもその気合は伝わってくる。だが特に必見のシーンは終盤の蟹江敬三千葉真一の戦い。これは個人的には時代劇史に残る戦闘シーンだと言いたい。いや、それでも言い足りない、今まで観たあらゆるアクションシーンのなかでもトップクラスである。このためにわざわざ作った長屋をバッキバキに壊しながら、ごうごうと吹く砂嵐の中で屋内や屋根などを縦横に駆け巡りながら斬りあう二人のカッコよさよ!!

 

 

 

トラック野郎 御意見無用

やりたい放題の星桃次郎!トラック野郎シリーズはどれも展開は同じだけど、どれも本当にいい。同じなのでシリーズのどれから観ても問題ないけど、第一作目の御意見無用は中盤の食堂を大破壊しながら桃さんが殴り合う大立ち回りシーンが最高。絶妙なタイミングで流れてくる歌謡曲、煙をかぶってとにかく殴り合う桃さん。そう、トラック野郎はアクションであり、アウトローであり、ロマンスであり、エロであり、哀愁であり、友情である。90分の間に映画の面白い要素がすべて詰まっている。邦画というものがこれだけ面白かったということを、これ一つで我々は知ることができる。

 

我々はずっとトラック野郎シリーズだけ観ておけばよいのだ!

 

 

 

 

 

不良番長 口から出まかせ

 

下ネタしか言わない山城新伍アパッチ族の子孫で片言の安岡力也、二枚目の宮内洋、そしてそれを束ねる梅宮辰夫。彼らが不良番長として、巨悪と立ち向かう不良番長シリーズ第10作目。「これが現実で起こってるんだから信じるしかねえ!」と劇中で山城新伍は言うが、まさにその通りの映画で、とにかくぶっとんでいる。物語終盤、ワイルドバンチのように100人を超える大勢の敵に囲まれたときでも、不良番長どもは恐れもしない。なぜか近くで発見されるミサイル、西部劇のように馬に乗って唐突に登場する菅原文太、いつの間にか敵の足元にあらかじめ仕掛けられていた大量の地雷、そして凧に乗って空を飛ぶ山城新伍。そんなありえないことが立て続けに起こり、すべてが不条理に解決する。ムカつくやつらは映画の法則を無視してさえぶち殺せ!!!

 

 

 

 

 

赤線玉の井 ぬけられます

 「赤線玉の井 ぬけられます」の画像検索結果

日活ロマンポルノ、神代辰巳監督の傑作。いや、これは本当に傑作で、オールタイムベスト級だった。スタイリッシュで抒情的でありながら、粘着質でもある。前衛的な演出もありながら、丹精に撮られたシーンもある。蟹江敬三(また!)に貢いでいる女郎が、別の男に追いかけられて川に泳いで逃げ込むシークエンスなどに至っては、起きている状況の悲惨さに釣り合わないほどの叙情さが画面から染み出している。かといって、敬三が打っているヒロポンを踏み潰すシーンは狂気的なまでにやるせない。これが同じ映画のうちにあるのだ。信じられない。

 

 

 

 

 

河内山宗俊

 

1930年代に活躍した山中貞雄監督の映画で現存するのは3本しかないが、どれも今でも面白い。それは「古いから価値がある」とか「すべての日本映画の手本である」とかそのような教養的な部分で良いのではなく、普通に、エンターテイメントとしてワクワクドキドキ出来て、しかも最後には切ない気持ちにさせられる。そして、その中でも最初に観るならば、この河内山宗俊だと思う。奥行きをつけた立体的な画面や、笑いの緩急の付け方も素晴らしいが、何よりも息もつかせぬ編集によって魅せるラストは必見。

 

 

 

 

 

ホステル2

 

お金を出して出来る経験をやりつくした金持ちが集う殺人クラブの標的にされた女子大生たちが、様々な方法で殺されるスプラッタホラー。前作のホステルのように裏切りが相次ぐ展開も本作で受け継がれており、それも純粋に面白いが、ただそれがラストで例えば「皆殺しのメロディ」のような西部劇然としたカタルシスに繋がっていくのも素晴らしい。今まで「はやく殺そうぜ!ワクワクするぜ!」といきがっていた男が、拘束していた女性の顔を、よそ見していた間に電動丸ノコで刻んでしまったとたんにおびえだす様などはリアルで滑稽だった。こんな「殺人あるある」がいくつも描かれるのも本作の魅力なのだ。さらに、ちんこをハサミで切断して犬に食わせるシーンが、日本版でもモザイクなしでみることもできる!

 

 

 

 

 

ZOO

 

身近な人間の死によって腐敗に関心を持った男が、腐敗した動物の連続写真を撮り続けるという様子を描いた本作。それぞれのシークエンスは刺激的で面白かったのだが、シーン同士のつながりが断片的で、中盤は没入感に欠けたのは残念。少し構成が理性的すぎる。それでも全体を通してみると、なぜか安心した雰囲気というか、妙に落ち着いた印象を醸し出しているのが不思議であり、それがこの映画の魅力だった。腐敗映像集は非常に面白いので、もっと長時間観たい。ちゃんと骨になるまで撮影されているのが魚だけしかなく、シマウマもちゃんと骨になるまで見たかったのだが、さすがにそこまで撮影するのはいろいろな問題があって難しいのかな。

 

 

以上、また次回。