読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

象牙色の立体

映画などについて書きます。

これはいいぞ...やっぱりダメだというサイクルを永劫に繰り返す「幕が上がる」

本広克行監督、ももいろクローバーZ主演の「幕が上がる」観ました。

 

f:id:solidivory:20150309041514j:plain

 

本広監督が嫌いで、ももクロがそこそこ好きな私です。本広監督としては、踊る大捜査線のTV版は好きですが、映画版は大嫌いです。第一期サイコパスは最初面白いと思って観ていましたが、終盤の失速感が尋常ではなかったので冷めました。虚淵脚本なのだから、他の人が監督してたら絶対もっと面白くなっていたはずです。そのため第二期は観ていません。

 

ももクロとしては、一番最近のアルバム以外全部持っています。つまり、ももクロの文脈はある程度知っていますが、最近はそこまで追っていないということです。簡単に言うと全くモノノフではない、ただのにわかといった感じです。でもZになってからの1stアルバムBATTLE AND ROMANCEの完成度の高さは未だに素晴らしいと思っています。

 

では熱量もそこそこのそんな私がなぜ「幕が上がる」を観に行ったかというと、前評判がかなり良かったからです。もしかしたら、本広監督が万に一つの確率で完全変態しており、さらにももクロと化学反応を起こすことで、「幕が上がる」が紛れもなく素晴らしい映画になっているということに賭けてみたくなったからです。オッズはとんでもないことになっていましたが、こういう地雷を踏んでいくのも映画鑑賞の楽しみではないでしょうか...そしてこの映画、観てみたら(そこまで)地雷ではなかった!!

 

 

--------------------------------------

 

さて、ももクロの「走れ!」を聴きながら、詳細について書いていこうと思います。

 

 


ももいろクローバー 走れ! - YouTube

 

 

 「幕が上がる」は高校の演劇部のメンバーが挫折と喜びを繰り返しながら、己自身と葛藤し、成長し、そして高校最後の演劇大会が始まるその瞬間までを描いた青春ものです。まず私は、こういう何かが走り出す瞬間のその時までを描いた映画が大好物なのです。同じ演劇青春映画でいうと「櫻の園」とか、ちょっと変わったところでいうと犯罪映画の「キラースナイパー」などですね。こういう映画をいまバリバリのももクロが演じるので面白そうな気がするじゃないですか!?

 

しかし、まず始まった時に、顧問の先生演じるムロツヨシの過剰な泣き演技にリアリティラインが下がりすぎて「これ大丈夫か!?」といきなり焦りました。そのあと弱小演劇部の部長である百田夏菜子演じる高橋さおりが徐々に演劇にのめり込んでいく様子が続くのですが、自分の心情をナレーション吐露する場面が異様に多い。彼女の気持ちがうるさいほどに繰り返されます。「うるせえよ!そんなこと言わなくても観客はわかるぞ!」「いや、もしかしてそんなことも分からないのか!?じゃあ分からないやつは映画なんて観るな!」と余計なことを映画の途中で考えてしまうくらいこれがウザい。たしかに、宇多丸さんが言っていたように、後半、彼女が成長するにつれて独白はなくなっていくので、ある程度意図的ではあると思うのですが、それでももう少しなんとかならないものか。

 

そういう序盤があって、ああ...やっぱりダメなのかなぁと思い始めたそのとき、彼女たちが自分のことを演劇にしながら語る「自画像」という演劇を始めます。簡単な椅子と額縁だけで自分たちのことを精一杯演じていく彼女たち。このシーンは、彼女たちが演劇によって輝く瞬間が立ち上がってくるのが目に見えるように、はっきりと分かる。まさに彼女たちが輝く一瞬を切り取っている。そうそう、こういうシーンを観たいがために映画を見ているんだよ!アイドル映画の最も重要な部分は、アイドルをいかに輝いてみせるかなので、そういう意味でもこのシーンは白眉...すばらしいぞ!きたぞこれは!!

 

 

...と思った瞬間、ドラッギー( 笑)な悪夢のシーンがきて完全に興ざめ。なんだこれは、文脈も関係ないし、何より演出が下手すぎる。せっかく映画にのめり込んで来たのに、がっかりして一気に現実に引き戻されました。

 

そうです。この映画はこれの繰り返しです。東京に行って本格的な演劇を観て、昔の先輩が頑張っているが、実は彼女も芽が出ず苦労しているということを控えめに表現するシーンや、ベットで語り合うシーンなどこれはいいぞ!と思うシーンもいっぱいあるにもかかわらず、そのあとのふざけたシーンや下手な演出で一気に現実に戻されるというサイクルが続くのです。

 

そして、その極め付けがラストですよ。これに関しては宇多丸さんも言っていましたが。

 

ついに、今までの苦労の成果が出る瞬間。部員の父親や母親が会場に集結し、音楽もどんどん盛り上がってくる。おお、ここで最後、彼女たちの演劇が始まる瞬間でこの映画が終わってくれたら素晴らしい。このときは正直、感動もしています。アイドルが最も輝く舞台が始まる瞬間で、映画が終われば最高じゃないですか。くるぞくるぞと思っていたとき....有名芸能人の全然関係ないメタギャグを突然入れてくるんですよ!!なんでここで!?

 

ふっざっっけんな!!!!!!!

 

いやいや、気を取り直せ俺。気を取り直せ。ここは感動する瞬間だ、よし。無視しろ今のは無視しろ。よしラスト、「幕が上がる」その瞬間で終わる!終わった、はいオッケー!!

 

 

監督がラストで本当に意味不明なことをしてくるので、自分でなんとか誤魔化してオッケーにしました。いやー、良い映画だった!!

 

 

...ラストシーンそのものの切れ味は完璧で、エンディングもアイドル映画としてもいいのに、なんでだよ。とはいえ、全編こんな感じでしたけど。折角面白くなりそうと思ったら裏切られ、また裏切られ、一体何度俺たちを裏切るんだ。

 

 そして、今回この映画で、監督の悪い癖がようやくわかりました。監督の悪い癖は、折角盛り上がった流れをぶち切るかのように謎のメタギャグなどを入れてくる特有の"照れ"にあります。彼は真面目に物語を語る勇気がないのです。そこが、せっかく良い映画になるものの全てを台無しにしているのです。特に「メタ的なギャグ」を物語内でやってしまうと、その瞬間に「これは映画だ」と観客が自覚することになり、せっかく高まっていた気分が一気に現実に引き戻されてしまいます。お気楽なところでのメタ的なギャグならばまだ分かりますが、物語としてぐいぐい盛り上げるべきところで、わざわざゴダールようなことをやる必要はないですよ。

 

これだけ面白いところも多いのに勿体ないですが、それでもそういう部分に目をつむれば楽しく観れる映画であったので、一概に否定することもできない評価が難しい映画でした。

 

しかし、モノノフは絶対面白いと思う映画でもありました。もう少しももクロファンなら絶対もっと楽しめたのに、そこは本当にもったいないことをしたなと思います。映画というのは、楽しめたもの勝ちなのですからね。