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象牙色の立体

映画などについて書きます。

オンリーゴッド

オンリーゴッドを観ました。

 

おととし「ドライヴ」で映画界を賑わせたニコラス・ウィンディング・レフン監督とイケメンのライアン・ゴズリングのマッチングで再び撮られた映画であり、そして、「ドライヴ」で熱狂した人々を文字通り斬り捨てるような、とても難解な映画になっていました。

 

レフン監督の過去作は、TSUTAYAになかったブリーダー、プッシャー三部作以外は観てると思います。ちなみにヴァルハラ・ライジングは以前の記事で感想を書きました。

 

 

 

基本的にレフン監督の特徴として、不条理なストーリーや極端なゴア描写、ウォン・カーウァイデイヴィッド・リンチのように原色を多用した幻想的な映像、さらにドライヴ以降はそれに加えて不釣り合いなポップ・ミュージックをのせるという点が挙げられます。

 

そして、前作「ドライヴ」は、それらが分かりやすいストーリーにのることで親しみやすく、かつ玄人好みっぽい不思議な映像になっていたことが、多くの映画ファンに愛されるポイントだったのでしょう。

 



Drive - Wanna see something (A real hero).avi ...

ドライヴで好きなシーンのひとつ。このシーンは多幸感溢れ過ぎてて過呼吸になります。あと関係ないけどキャリー・マリガンいい。

 

 

 

しかし、レフン監督の本性は我々が思っているよりもだいぶ鬼畜でした。

  

 

 

"オンリーゴッド - ストーリー"

アメリカを追われたジュリアン(ライアン・ゴズリング)は、今はタイのバンコクでボクシング・クラブを経営しているが、実は裏で麻薬の密売に関わっていた。そんなある日、兄のビリー(トム・バーク)が、若き売春婦を殺した罪で惨殺される。巨大な犯罪組織を取り仕切る母のクリスタル(クリスティン・スコット・トーマス)は、溺愛する息子の死を聞きアメリカから駆け付けると、怒りのあまりジュリアンに復讐を命じるのだった。しかし、復讐を果たそうとするジュリアンたちの前に、元警官で今は裏社会を取り仕切っている謎の男チャン(ヴィタヤ・パンスリンガム)が立ちはだかる……。

 

 

 

 

上記のストーリーを読む限り、「よくある復讐ものアクションじゃないの? 面白そうじゃん」と思われると思いますが、そういう人がこの映画に騙されるのです。落ち着け。

 

まず特筆すべきは、主人公が元警官の男チャンに最後まで一度も勝てません。元警官は常に無双状態にあり、映画が終わるまで絶対に負けません。主人公の周りの人間はほとんど警官に殺されます。主人公はなす術もありません。

 

また、この元警官は、サーベルを用いて罪を犯した人間を殺します。このサーベルは普段は所持していませんが、人間を断罪するときになると亜空間から召喚します。「今まで持ってなかったのに、そのサーベルどこから出てきたの?」ってなります。そして、そのサーベルで罪人を断罪した後で、カラオケを歌います。とても心を込めて、チャンがカラオケを歌うシーンが絶対にあります。そしてまたチャンが罪人を殺します。次にカラオケ。殺す。カラオケ。殺す。カラオケ。

 

 

 

これが「オンリーゴッド」です。

 

 

 


Only God Forgives - Red Band Trailer (2013) [HD ...

オンリーゴッド 予告編    「Wanna Fight?」

 

でも、映画を観た人の中は、タイトルの"ゴッド"がこの警官だと分かった方もいるでしょう。神(ゴッド)の断罪の道具としてのサーベル、そして、断罪したあとの鎮魂歌としてのカラオケですよね。

 

この映画は、神と人間が対峙して、その絶対的な力を見せつけられたときに、人間はどのようにして生きていくのか。また、超えられない壁と対峙したときに自分を見つめ直すことで初めて得られる心の救いというのをテーマしている映画なのでした。

 

このことを考えながら観ると、

ラストシーンは納得がいくと思います。

 

 

...でもレフン監督の魅力はストーリーだけではありません!

 

いくら神とは言っても、人を殺した後にカラオケを歌ったり、サーベルを亜空間から取り出すなんてふざけてるみたいじゃないですか。レフン監督の魅力は、こういうギャグすれすれのことを、いかにも真面目そうに撮る不思議な演出と、そのシュールさをより引き立たせるゆったりとした間、それに、どこかおかしな色彩と壁の模様、そういった演出の妙なのです。そういう意味では極めて映画的な映画ですね。

 

 

...ただ嫌いな人は相当嫌いだと思います。

 

 

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左右対称な絵作りもオンリーゴッドの見所

 

でも、なぜレフン監督はこういう不可思議な演出や映像をやりたいと思うようになったのでしょうか。あまりに奇妙なセンスです。一体どんな映画監督に影響を受けたのでしょうか。不思議に思っていました。

 

 

その答えを探して、ある尊敬する映画ブロガーの方のブログを観ていると、レフン監督の最も好きな映画は「東京流れ者」と書かれていました。

 

 

 

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「東京流れ者」

 

 

監督は鈴木清順で、主演は渡哲也。日本映画、それも歌謡映画です。ちなみに歌謡映画とは、主に1950年代から1960年代を中心に作られたジャンルで、歌謡曲やその時々の流行歌を題材にしたものであり、出演者がミュージカルのように歌うものもあれば、もっぱら曲をモチーフに展開するものもあった、とwikipediaにはあります。

 

早速借りて観てみました。

すると、「ドライヴ」と全くストーリーが同じ!

 

さらに、原色豊かな色彩、ギャグすれすれの演出、突如流れるポップな歌謡曲。レフン監督の特徴にぴったりと一致しています。つまり、レフン監督の原点は、渡哲也のアイドル映画だったのです。そして、なによりもこの映画、めちゃくちゃ傑作。

 

 

邦画オールタイムベストの一本に入るくらいの傑作を、

こんなタイミングで観るとは。

 

アイドル映画の枠を借りて映画を撮らせてもらっているにもかかわらず、鈴木清順が好き放題やっています。1シーン1シーンがスタイリッシュで、とても1966年の日本映画とは思えない。例えば、主人公が捨て台詞とともに画面から消えたと思いきや、カメラをパンすると遠い後ろ姿が見えるという流れをワンカットでやってのけたり...真っ白な雪景色の中歩いてる主人公が、呼び止められて振り向くと主人公の陰に隠れていままで見えなかった真っ赤なポストが真っ白な画面にパッと現れたり。実際海外ではカルト的な評価を得ているようで、影響を受けた監督さんも多いそうです。

 

 

そう考えると、レフン監督はまだ「東京流れ者」という大傑作を超えられていませんね。

 

 

 

 

 

 

結論:鈴木清順は偉大だった。