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象牙色の立体

映画などについて書きます。

何かが空を飛んでいる

「何かが空を飛んでいる」を読みました。

UFOについての本です。

UFOとは未確認飛行物体...いわゆる空飛ぶ円盤です。

 

いまさらUFOかよ!という意見も分かりますが、とりあえず落ち着いてください。伝説の円盤本「何かが空を飛んでいる」は凡百のUFO書籍とは一線を画す奇跡的名著なのです。そもそも僕自身UFO本を百冊も読むほどUFOに興味を持っていません(子供の頃にムーとかは読んでたよ)。でも、そんな僕でもとにかく一線を画すと断言させていただきます。

 

 

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定本 何かが空を飛んでいる  /  著:稲生 平太郎

 

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「何かが空を飛んでいる」は長らく復刊が待たれていた奇跡的名著で、国書刊行会(愛すべき出版社!!)から最近復刊した書籍です。復刊前はAmazonで60万円(!!)の値がつけられていたという噂もあります。そして、復刊して幾ばくも経っていないにもかかわらず、既に品薄で、再び高値がつく可能性があります。

 

 

 

なぜこのUFOの本がこんなにも一部の人たちを熱狂させるのでしょうか。

 

それこそ、凡百のUFO本が取り扱うことと言えば、

 

 「最近UFOの存在を証明する新しい報告があった。」とか「私はUFOに誘拐され、チップも体に埋め込まれた。だからUFOは存在する!」とか、またはその逆で、「こういう証拠があるから、UFOは存在する訳がない。バカバカしい!」という類いのことばかりです。しかし、こういった「UFOが存在するか否か」についての議論は決して決着がつきませんし、正直どうでもいいです。

 

 

しかし、一時期に比べれば下火になったとはいえ、UFOを目撃する報告というのは現在になってもありますし、UFOをみた本人たちは、実際に「何かはみている」もしくは「何かは見たと思い込んでいる」のは確かです。UFOにそれまで興味がないような人でも、UFOを目撃したと言い出すということは、やはり嘘をついているにしては、不自然過ぎる気がします。

 

つまり、UFOは存在しなくても、人々は何かが空を飛んでいるのを確かに見ている。

では、それはなんなのか。

 

「何かが空を飛んでいる」は、「UFOがいるかいないか」について論じるものではなく「なぜ人々はUFOを見るのか」について論じているのです。

 

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「なぜ人々はUFOをみるのか。」

 

その理由はひとつではないでしょう。

 

嘘をついている、妄想である、幻覚をみている...そんなことをまず思い浮かべます。では、なぜ嘘をつくのでしょうか。なぜ妄想するのでしょうか。なぜ、幻覚をみるのでしょうか。「UFOを見た」と思い込むことに、どのようなメリットがあるのでしょうか。どのような、原因があるのでしょうか。

 

UFOの目撃例は、アメリカ合衆国が群を抜いて多いといいます。UFOは世界中で出現していいはずなのに。その理由は何でしょうか。「何かが空を飛んでいる」は、彼らが「UFOをみる」という理由の根源について、民族学的、心理学的に議論していきます。UFOを見るという行為には、宗教観、民族的意識、レイシズムなどが密接に関係しているのです。

 

さらに、UFOを見るという行為自体が、人間の歴史と非常に密接に結びついてきたことが明らかになってきます。例えば、キリスト教の宗教体験で、ある一定の段階に達すると、空に光が見え、そして、本人に光が射し、宙へ浮いていくような錯覚に囚われると言います。これは、UFOに誘拐された人々の証言と酷似していないでしょうか。

 

...じゃあ結局UFOをみるって何なんだよ!

 

その説明は、是非読んでください。

9割9分説明してくれるはずです。

 

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....先ほど9割9分説明してくれると言いました。つまり、UFOをみるという行為についての全てを説明してくれないのです。でも、全部を簡潔に説明してくれなきゃダメじゃないですか。せっかくUFOについて初めてなにかしら明確な答えを知れると思っていたのに!

 

何が奇跡的名著だよ、と思いますよね。

 

でも、この「9割9分説明してくれる」というのが、この書籍が奇跡的名著と言われるもうひとつの理由だと思います。決して、完璧な証明はしない。「何かが空を飛んでいる」は立派な研究書でありながら、オカルト本でもあるのです。

 

この本では「UFOを見る」という現象は9割9分、心理学的もしくは民族学的に説明できると言います。しかし、残りの1分はどうしても説明できません。もう「何かが空に飛んでいる」としか言えない目撃例も存在しているのです。徹底的にUFOを見るという行為の理由を説明されて納得した後に、「いや、でもこの目撃例は、その論理とは外れているでしょ?」というものを提示されると、マジで怖い。

 

圧倒的に説得力持った上で、恐怖を与えられてしまう。つまり、9割9分が説明できる現象でも、残りの1分はいつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌という訳です。研究書の体裁を保ちながらも、H・P・ラブクラフトの小説を正統進化させたようなオカルトホラー(コズミックホラー)としても、ちゃんと成立しているのです。

 

ちゃんとどころか、これこそがクトゥルフ神話の極北なのかもしれません。

 

このような類いの書籍で普通は絶対に両立し得ない研究的側面とオカルト的側面を両立させて、しかもその両方ともが究極的なものになっていると言う点で、「何かが空を飛んでいる」は奇跡的名著と言えるのではないでしょうか。

 

定本 何かが空を飛んでいる

定本 何かが空を飛んでいる