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象牙色の立体

映画などについて書きます。

ゼロ・グラビティ

ゼロ・グラビティを観た。

 

ちなみに、この映画の原題は「GRAVITY」。重力という意味だ。

原題の意味の方がいい。無重力ではこの映画の本質をついていない。

 

 

 

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「映画を観たという行為そのものを誇りに思うときが、僕にもついに来たのだ。」

ゼロ・グラビティを初めて映画館で観たとき、僕はそう思った。

 

 

 

 昔、「2001年宇宙の旅」という映画を始めてDVDで観たとき、衝撃を受けた。CGもないこの時代に、どうやれば宇宙空間を、こんなにも美しく表現できるのだろう。当時観ていたら、もの凄い衝撃を受けてただろうな、と。そして、この映画を1度でいいから映画館で観てみたいという強い欲求にかられた。僕は、この映画をリアルタイムで観ていた映画ファンを羨ましく思っていた。でも、SFの名作が生まれていたあの時代には、僕はまだ生まれていなかった。

 

 確かにSFというジャンルはいまでも存在しているし、ある一定のクオリティの作品は供給され続けている。しかし、「2001年宇宙の旅」のような、宇宙の恐怖や深淵、美しさを体験する作品は、残念ながら、この作品が公開されてから45年間、たった一本も生まれなかった。そこで、ゼロ・グラビティが公開された。

 

 ゼロ・グラビティで描かれる、極限まで過酷で冷徹な宇宙空間。でも、限りなく美しい宇宙空間。これを映画館で経験できた。その事実だけで、かつて「2001年宇宙の旅」を映画館で経験した映画ファンのように、僕も後世の映画ファンたちに自慢できるだろう。

 

 

 

 

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「宇宙で遭難した主人公が、地球に帰ろうとする。」

 

 これだけでゼロ・グラビティのあらすじは説明できる。単純過ぎるストーリーであるこの映画が、面白くなるために必要な条件は、宇宙空間を実際に体験させること。要求されるハードルは異常に高いにもかかわらず、アルフォンソ・キュアロンはそれを軽々と越えてしまい、さらに、2001年宇宙の旅に負けないようなメッセージをラストに提示した。 ゼロ・グラビティは、一人の主人公が、どうやって地球に帰るのかという話で終わっていない。ラストシーンはすべての生命を育む地球への賛歌なのだ。

 

...でも地球のすごさなんて、普段地球で暮らしている僕たちは気付かない。そんなことを、言葉で説明されても絶対にピンと来ない。地球を外側と内側から実際に眺めたとき初めて、僕たちは地球の偉大さを知る。それを、宇宙飛行士でない僕たちに、実際に宇宙空間を体験させることによって気付かせてくれるのが、ゼロ・グラビティなのだ。

 

「体験させることによって」と言ったが、

体験することでしか、この事実に気付く方法はない。

 

この映画を"映画館"で観るか、

宇宙飛行士になるかのどっちかしかない

 

この映画はDVDで観ても、何の意味もない。映画館で、それも出来ればIMAX3Dで観ないと意味がない。上映が終わってしまったら、この映画の価値は半分以下になるだろう。

 

その意味でも、

是非、映画館での鑑賞をお勧めします。

 

 

 

 
映画『ゼロ・グラビティ』予告5【HD】 2013年12月13日公開 - YouTube

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----------------------以下ネタバレ-------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラストシーンについて少し言及。

 

...無事宇宙空間から生還した主人公は、脱出ポットに乗って、アメリカの湖に着水する。

(監督インタビューによると、この湖は原始の生命スープを表しているのだそうだ。)

 

脱出ポットから出た主人公は湖を泳いで、なんとか岸へと辿り着く。生命が生存できない宇宙を体験した彼女は、改めて生命が生存できる「地球」を眺める。

 

彼女は立ち上がろうとするが、無重力で長期間過ごしたせいで筋力が弱り、なかなか立ち上がれない。なんとか踏んばり、よろよろと立ち上がる。 これはおそらく、生命が初めて陸に上がった瞬間を表しているのだろう。彼女はおぼつかない足取りで、地面をゆっくりと歩き始める。一歩一歩踏みしめながら、歩き続ける。

 

画面が暗転する。

ここで、この映画のタイトルが出る。

  

「G R A V I T Y」

 

重力という意味だ。

 

重力は多くのことを示唆する。生命を育む地球の重力、生きるという希望への重力、そして、娘の死など我々の生活に重くのしかかる重力である。多くの重力を背負いながら、それでも主人公は立ち上がり、一歩一歩進んでいく。

 

重力が無い空間では、娘の死によって生きる意味を失っていた主人公。 何度も何度も挫折を経験し、一時はエアポットで酸素を抜いて簡単に死のうとするが、それでも生きることへの重力が勝利する。ここで主人公は、重力の本当の重要さを知る。無重力の空間で、何の重みも背負わずに死んでいったほうがどれだけ楽だっただろう。だが、それでも主人公は、再び重力を持つ地球に帰還する。背負うものがない無重力の宇宙から、全てを背負わなければならない重力を持った地球に。そして、主人公は地球でそれでも歩き続ける。

 

 

 

 

 

人間は、重力がなければ、歩き続けられない。