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象牙色の立体

映画などについて書きます。

「おおかみこどもの雨と雪」を観たよ。

細田守監督「おおかみこどもの雨と雪」観ました。

結論から言うと、すごく良かったです!!

 

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あらすじ

19歳の大学生花は、あるときおおかみおとこと運命的な恋に落ち、やがて雪と雨という姉弟が誕生する。彼らは、人間とおおかみの両方の血を引くおおかみこどもとしてこの世に生まれたのだが、そのことは誰にも知られてはならなかった。人目を忍びながらも家族四人で仲良く都会の一角で暮らしていたが、ある日、一家を不幸が襲い……。

 

 

実は私は、今まで細田守監督の作品が全然ピンと来なくて「細田守とは合わさらんなー。」と思っていました。でも細田守監督のアニメの構図や色彩感覚は、ヨーロッパ映画や昔の邦画の影響を受けていてかなり好きなのです。具体的には、

 

・同じ構図で登場人物をとらえることが多い

・引き(遠くから全体を映し出す)が多い

・コントラストが強い

 

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 例えばこんな感じ。

 

 

...という特徴があります。でも、肝心の物語が微妙でした。監督はなぜこんなに青春映画が大好きなんだよ、と独りごちていました。

 

 しかし、今回の「おおかみこどもの雨と雪」にはぴったり合わさったのです。素晴らしい映画でした。ここでは最新作の「おおかみこども」のどこが今までの細田守作品と違うのか、細田守監督の作風の特徴や、監督の原点を交えながら考えていきたいと思います。

 

 

 

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細田守監督は、初監督作以外はすべて青春映画にテーマを絞っています。

なぜ、青春映画なのでしょうか?

 

その答えは「おおかみこども」を観たことでようやく分かりました。

 

 

監督が青春映画を撮る理由は、監督がある一人の映画監督が大好きだからに違いありませんでした。その監督は、青春映画の名作を数多く制作しています。細田守監督はその監督へのリスペクトを込めて、いままで青春映画を撮ってきたのでしょう。

 

 

その監督とは「セーラー服と機関銃」や「ションベンライダー」を生み出した、

相米慎二監督

 

 

私は、相米慎二監督の映画が好きです。特に「台風クラブ」という青春映画はオールタイムベストに入るほど好きです。台風クラブは、台風で学校に閉じ込められて、帰れなくなった生徒達が日頃の鬱屈した感情を爆発させるという、青春映画の傑作です。

 

 

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あらすじ

東京近郊の地方都市。私立中学校のプールに夜、5人の生徒たちが泳ぎにやってくる。彼女たちは先に来ていた男子生徒に気づき、イタズラをするが度が過ぎて溺死寸前の状態に追い込んでしまう。翌朝、ニュースでは台風の接近を告げていた。以来、生徒たちの間で徐々に何かが狂い始めていくようだった……。

 

台風が近づいてくるとテンションが上がるということは、子供時代誰でも経験することだと思います。私は今でもテンションが上がります。この映画では、そのような状況で少年少女達が「どうなってもいいや!」という刹那的な気持ちを爆発させると同時に、今までの生き方やこれからの人生について考えていきます。相米慎二監督の特徴である、定点での長回し(これが上記の細田監督の作風の原点ですかね)や、俳優の演技から、青春の狂気が伝わってきます。

 

特に、体育館でp.j.&cool runnings children of the worldのBGMをバックに生徒達が下着姿で狂ったように踊るシーンや、豪雨の中で「もしも明日が」を狂ったように歌うシーンは、日本映画史に残る名シーンです!!

 


「台風クラブ」 もしも明日が...。 - YouTube

台風クラブ/もしも明日が

 

 

 

そして「おおかみこどもの雨と雪」は、

この「台風クラブ」に強い影響を受けていることがすぐに分かりました。

 

 

というか、

展開が「台風クラブ」とほぼ同じなのです!

 

 

 

 

...観ていて驚きました。これは細田守台風クラブなのだと思って、涙さえこぼれそうになりました。「台風クラブ」におとぎ話を交えながら現代アニメに換骨奪胎したのが「おおかみこどもの雨と雪」なのです。これは、細田守監督自身のインタビューでも実際に語られています。

 

http://eonet.jp/cinema/news/domestic/detail_4622.html

細田守監督『おおかみこどもの雨と雪』は相米作品『台風クラブ』の影響抜きには語れない!

 

細田守監督は、「おおかみこども」でいままで影響を隠してきた、相米慎二監督リスペクト、いや「台風クラブ」リスペクトを前面に押し出してきました。そのため、いままで「きれいな青春」を描き続けてきた細田守監督は、自分の趣味を前面に押し出すことが出来るようになります。そして、ついに青春のきれいな部分だけではなく、青春の脆さや狂気を詰め込むことが出来るようになったのです。

 

青春はきれいな部分だけではありません。

青春の狂気や脆さが描かれなければそれは青春映画と言えません。

 

狼の子供であるという特殊な生い立ちから来る、雨と雪の精神的な脆さを「台風という異常な状況」で包み込むことで、登場人物のみんなを成長させ、すべてを受け入れる環境を作り出したことが、この映画にそういう脆さを包み込む心の広さを生み出しました。台風クラブの見事な換骨奪胎です。

 

 

 

台風が、子供の雨と雪を成長させ、母の花は彼らの成長の全てを受け入れて見守る台風になりました。

 

 

 

そんなわけで、

おおかみこどもの雨と雪」は傑作でした。

 

 

 

 

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

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実は雨の側の物語はいろいろツッコみどころがあるのですが、それをここで言うのは野暮です。もし、「おおかみこどもの雨と雪」を観て好きになったら、

 

台風クラブ」も是非。